最終更新日:2023年11月10日
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会社を設立する際に必要な手続きには、さまざまなものがあります。それらに加えて起業後の経営戦略や資金繰りなど、考えなければならないことも多いです。これらのことを整理せずに一度で考えようとすると、頭がパンクしてしまうことでしょう。そこで今回は、起業する際にあらかじめ知っておきたい手続きの流れについて、詳しく解説します。
会社を設立する際にまずしなければならないことは、事業計画書を書いて、頭の中にある計画を見てわかる形にすることです。頭の中だけで計画を立てていても、現実的なものにはなりません。実際に書き出してみることによって、無理をしている部分や無駄な部分が分かってくるのです。また、事業計画書は、融資を受ける際にも必要になります。
事業計画書の書き方としては、まず創業者や創業メンバーのプロフィールを書きましょう。このプロフィール欄には、事業と関係ないことを書き込んでも意味がありません。この創業者や創業メンバーであれば事業が成功しそうだ、と思われるようなものにすることが大切です。
次に、事業の理念や目的、ビジョンを書きます。融資を受ける際、有利なのはその事業の経験者であることですが、理念やビジョンが明確であれば未経験であっても審査に通りやすくなります。
理念やビジョンを書いたら、その理念やビジョンをどうやって実現していくのかという戦略を書き出しましょう。このとき、文章だけでもかまいませんが、図面などを使って視覚化すると、より分かりやすくなります。あくまでも客観的、現実的な視点を忘れないことが重要です。また、戦略を記載する際にはライバル会社をしっかり研究して自社の強みは特徴がどこにあるのかを把握しておきましょう。生産方法や仕入れ方法、販売戦略についても具体的に書き出していくことが大切です。
次に売上げや利益の予測、資金繰りの予測を書き出しましょう。そうすることで融資を受ける際に相手を説得しやすくなります。とりわけ重要なのは、1年目から数年間の損益計算書予想を書いておくことです。そして最後に、ここまで立ててきた計画から導き出される開業資金を書きます。
事業計画書がまとまったら、会社概要を用意しましょう。会社の概要とは、社名や代表者名、事業内容、会社の所在地などのことです。よく企業のホームページなどに掲載されている部分で、定款を作成する際に反映されます。
融資を受ける際には、会社概要書が必要となる場合があります。事業計画書を提出する場合には必要ありませんが、事業開始から第1期の決算を過ぎた後に融資を受ける場合、事業計画書の変わりに会社概要書が必要となるのです。
会社概要書に記載しなければならないのは、まず会社の沿革や経営者の経歴です。また、許認可が必要な事業の場合には、取得した許認可番号も記載しましょう。
次に従業員を雇用している場合には従業員数や、雇っている形態を記載します。関連企業がある場合にはその情報も書き込みましょう。融資を受ける際、担当者は関連企業の財務状況などをチェックすることがあります。
また、融資を受けるために会社概要書を用意する場合には、経営者の借入状況を会社概要書に記載する必要があります。住宅ローンや自動車ローン、教育ローン、カードローンなどです。
会社概要書にはどのような商品やさービスを取り扱っているかということも会社概要書に書きこむ必要があります。事業計画書を作成する際に記載した自社の商品やサービスの強みを参考にするとよいでしょう。
最後に、取引先を記載します。どのような企業と取引をしているのかということを明らかにすることは、企業の信頼性を高めることにつながります。とりわけ融資を受ける際にはキャッシュフローの状況を見極めるための重要な項目となるので、この項目で借入を返済できるだけのキャッシュを生み出す取引関係があるということをアピールしましょう。
日本はハンコ社会ですので、会社設立の際にはさまざまな印鑑が必要です。印鑑には個人用の印鑑としては認印と銀行印、実印の3種類、会社用の印鑑としては代表社印、銀行印、会社印の3種類があります。それぞれ用途が異なるため用意しておきましょう。
まず個人用の印鑑として、認印は「認めたことを証する印鑑」です。宅配物の受け取りの際に押印するものと考えるとよいでしょう。いわゆるシャチハタです。また、銀行印は口座を開設する際に必要な印鑑です。この印鑑はお金を動かす時には必ず必要になります。実印は、住民登録をした際に使用した印鑑です。この印鑑は、必要な時に印鑑証明を発行してもらうものです。契約書や公正証書など、法律上、社会上の権利が発生する重要な書類を作成する際に使用するものですので、取り扱いに注意してしっかり保管しましょう。
会社用の印鑑で実印にあたるものは代表者印です。会社設立の際にはこの代表社印を押印して法務局に届出を行います。そのほか、小切手や手形の発行、契約締結時にも使用します。形状は一般的には丸型二重枠です。外側に会社名、内側に「代表取締役印」と彫られています。また、銀行印も個人用とは別に会社用のものを用意しましょう。代表者印と銀行印を併用するケースも多いですが、安全性を考慮すると別々にした方が無難です。そのほか、会社の象徴となる角印を用意します。この印鑑は会社印と呼ばれ、請求書や見積書、領収書、契約書などの文書の社名の所に押印します。
これらの印鑑はいざという時になかったら困るものです。社名が決まった時点であらかじめ発注しておきましょう。
会社を設立する際には、さまざまな資金が必要になります。資本金自体は1円からでも起業が可能ですが、現実的には1円だけで会社を設立できるというわけではありません。登記するだけでもお金がかかりますし、そのほか事務所を借りる場合には物件取得費が必要となるでしょう。また、起業のためのセミナーの中には有料のものもあります。起業するだけでなくその後も事業を順調に運営していくことを考えるならば、ある程度の準備金を蓄えておくことが大切です。
基本的には開業資金はすべて自己資金で賄うことが理想です。その方が、万が一の際のリスクを回避することにもつながるでしょう。しかし、それができない場合には、出資者を募るという方法もあります。出資者を募る場合に重要なポイントは、出資者の情報も得ておく必要があるということです。定款を作成する際には、出資者から必要書類や捺印をもらわなければなりません。
融資を受ける場合、資金調達方法には大きく分けて3つの種類があります。ひとつは返済義務のある資金調達方法です。政策金融公庫などから借入をしたり、社債を発行するのがこの方法です。返済義務のない資金調達法もあります。出資を募ることやファクタリングのほか、補助金や助成金などが挙げられるでしょう。最後に自分が所有している財産を売却することで資金を調達する方法があります。経理上で資本金に計上されるのは、返済義務のない資金調達方法です。出資者が集まらないという場合には、ファクタリングや助成金、補助金という手段で資本金を調達することができないかどうか検討するとよいでしょう。
会社を設立する際にはさまざまな手続きをしなければなりません。その際に必要な書類としては、設立登記申請書のほかに定款や印鑑届出書、資本金の払込証明書、発起人の決定書、設立時の就任承諾書、印鑑証明書が挙げられます。
まず必要なのは、登記申請書です。登記申請書の書き方などは、法務局のホームページでしっかりと確認しましょう。そこに書かれている事例を参考に作成しましょう。また、登記申請する際には登録免許税を収入印紙で納めなければなりません。この収入印紙を添付するための台紙も用意しておきましょう。そのほか、法務局で入手できるOCR専用の登記申請用紙も提出する必要があります。OCR用申請用紙の代わりにCD-Rなどの磁気ディスクを代用することも可能です。
申請の際、登記申請書と一緒に提出しなければならないのが定款です。定款は公証人の認証済みかどうかをしっかりチェックしておきましょう。紙で提出する場合には謄本、電子定款の場合にはCD-Rなどの磁気ディスクが必要になります。
資本金の払い込みがあったことを証明する払込証明書も一緒に提出しましょう。払込証明書は払込がされた発起人代表者の通帳のコピーを一緒に綴じることで作成します。
定款に具体的な本社所在地を記していない場合には、具体的な所在地を発起人の過半数の一致で決定したことを証明する「発起人の決定書」を添付する必要があります。この決定書に発起人全員の押印があるかどうかを必ずチェックしておきましょう。
人事に関する書類も用意して提出しなければなりません。取締役や代表取締役、監査役を設ける場合には、その就任承諾書を添付しましょう。もちろん、取締役が一人の場合にはその人が代表取締役となるので、代表取締役の就任承諾書は必要ありません。
印鑑に関する書類も、漏れがないかをチェックすることが大切です。用意しなければならないのは、取締役の印鑑証明書と、会社の実印を登録するための印鑑届書です。印鑑届書には代表取締役の印鑑証明書を添付する必要があります。印鑑証明書は発行3カ月以内のものを用意しましょう。
定款は、その会社における憲法にあたります。定款を作成するということは、設立する会社における最も重要な決まりごとは何かを策定することです。会社を設立する際には、必ず作成しなければなりません。この作成に際しては発起人の全員の同意が必要となります。また、策定された定款は発起人全員が署名、または記名押印し、公証人の認証を得ることが必要になります。
定款に記載する項目には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3つがあります。絶対的記載事項は、必ず定款の中に記載する必要があるもののことです。この記載事項を欠いている場合、その定款は無効となってしまいます。絶対的記載事項に含まれるものとしては、会社設立の目的や商号、本店の所在地などが挙げられます。また、出資される財産の価額や発行可能株式総数といった経理上の項目も記載しなければならないので注意が必要です。
相対的記載事項は、その項目を記載しないということを定款に定めることができますが、それをしなかった場合、記載がないと効力が認められない項目です。相対的記載事項には、取締役会や監査役などの機関設計のほか、株主総会の招集期間、取締役の任期などが挙げられます。
任意的記載事項は、特にその記載がないからといって定款が無効になるというわけではない項目です。法的に記載が定められているわけではないものの、その会社が自社の基本的事項としてあえて定款の中に記載している重要事項です。たとえば、定時株主総会の招集時期や取締役及び監査役の員数などがその代表的なものとして挙げられます。会社の規則は基本的には株主総会決議や取締役会によって制定されますが、その取り扱いそのものを対外的・対内的に明確にするという観点から記載される事項です。任意的記載事項を定款に記載した場合、その内容を変更するためには株主総会の特別決議が必要になります。このことを定款変更と呼びます。つまり、それだけ重みのある会社の根本原則といえるでしょう。
定款の作成は司法書士か、あるいは行政書士に依頼することになります。自分だけで行うこともできますが、事業内容の書き方などについて不備があると定款そのものが認められないということもあります。そのため、できればプロに依頼した方がよいでしょう。
作成した定款は公証役場で認証を受けることになります。注意するべきポイントは、法務局への登記手続きの際には書面だけでなく、CD-Rでも定款を提出しなければならないということです。登記手続きの際はCD-Rに加えて、その内容をプリントアウトしたものを一緒に提出します。
会社設立を設立した際には、そのことを周りに知ってもらうために広報活動をしなければなりません。知らせる方法としては、ロゴマークを作る、名刺を印刷する、ホームページを作成する、挨拶状を作る、チラシを刷るなどの方法が考えられます。とりわけ近年では、ホームページは作成しているのが当たり前の時代となっています。ホームページだけでなく、FacebookやTwitterなどのSNSも効果的に利用することで事業開始後のスタートアップをより効果的に行うことができるでしょう。
広報活動の優先順位としては、まず新聞やテレビといったメディアに掲載されるよう働きかけることが大切です。自社が取り扱っている商品やサービスが、SNSなどを通じて口コミで自然に広がっていくということはそうあるものではありません。ニュースは一般的にまず新聞やテレビで取り上げられたからこそ、拡散していくものなのです。
新聞やテレビといったメディアに取り上げられるために気をつけるべきポイントは、自社のPRをニュースバリューのあるものにすることです。ニュースバリューには、画的に面白いこと、旬のネタであること、シャレがきいていることなどが挙げられます。これらのポイントを意識して資料を作成し、マスコミ各社へニュースリリースとして提供しましょう。ニュースリリース作成のためのポイントは、まずタイトルにこだわること、結論から書くこと、写真は目立つようにタイトルの下に設置することです。そして常日頃から新聞を読んだりニュースを見たりすることで、どのような素材が取り上げられやすいのかということを肌感覚で身につけることも大切です。
営業戦略を立てる際には、いくつかの考えておくべきポイントがあります。まずは、ターゲットの設定です。営業戦略は何よりも顧客側の視点に立って練る必要があります。ターゲットとなる顧客が対価を払ってでも解決したい課題とは何か、ということをまず考えましょう。その課題がすでに顧客の側で予算化しているのであれば、より効率的に営業活動を行うことができるでしょう。一方、顧客側がまだ気付いていないものの、その課題を解決することがコスト削減や売上向上につながるものは何か、ということを考えることも重要です。この場合、顧客側にニーズ意識を持ってもらうところから始めなければならないので営業活動は大変になりますが、受注に至れば多くの利益を獲得できるケースが多いです。そのほか、ライバル会社がどれくらいいるのかを考えることも重要です。ライバル会社が多ければ多いほど、受注の見込みも少なくなるでしょう。
もちろん、自社側からの視点も忘れてはなりません。どのような顧客が自社の商品やサービスを知った瞬間に購入を決定してしまうのか、といったことを考えておくことが大切です。もしも力の限り営業しなければ売れる見込みがないような商品やサービスであるのなら、そのような商品やサービスは根本的に必要とされていない可能性が高いでしょう。営業戦略は、適切な顧客に対して適切に商品説明をすることで売上げにつなげる、というのが理想的です。
次に考えるべきポイントは、どのようにアプローチするかということです。顧客はどこにいて、何をしているのかということを意識しましょう。自社の商品やサービスを求めているのはどんな業界のどんな業種のどんな立場の人なのか、ということを考えることが大切です。
アプローチするべき相手が明確になれば、具体的に顧客のリストアップとアプローチ方法を考えることができるようになります。
また、アプローチする際に重要なポイントは、新規顧客よりも先に既存顧客にアプローチするということです。なぜなら既存顧客はすでに取引があるため、自社の商品やサービスに対して一定の信用を持っています。その場合には、商談までこぎつける労力が少なくすみます。起業前の人脈や関係を活用していくことが重要なポイントとなるでしょう。
そのほか、商品やサービスの市場規模はどれくらいなのかということも考慮しておく必要があります。そのことに加え、扱う商品やサービスが将来どう変化していくのか、成長可能なのかといった予想を立てることも大切です。そして、現在だけでなく将来的にも競争力を維持するために必要なものは何か、ということを考えましょう。
起業後に事業を経営していく上で、避けては通れないのが資金繰りの問題です。どれだけよいアイデアがあり、優れた商品やサービスを取り扱っていたとしても、資金繰りに失敗してしまっては事業を続けていくことはできません。操業を続けていくためには具体的にどうすればよいのかということを考えておくことが大切です。
資金を調達するには、大きく分けて3つの方法があります。まずは「返済しなければならない資金調達」です。日本政策金融公庫などの金融機関や、親、友人といった知人から借入をすることで資金を調達することができます。ただし、できれば親や友人といった親しい人からの融資は避けた方がよいでしょう。というのは、万が一返済不能となっていた場合、そのことが原因で人間関係が壊れてしまうことにつながる可能性があるためです。基本的には融資は金融機関から借入れるものと考えておくのが無難です。
「返済しなくてもよい資金調達」にはベンチャーキャピタルなどからの出資が挙げられます。この場合には返済は不要ですが、株を発行することで出資者に株の値上がり益と配当を返さなければなりません。また、株式を譲渡することは経営権を譲渡することでもあります。資金調達のために株式譲渡を行う際には、慎重な検討が必要といえるでしょう。
そのほか、国や地方自治体、さまざまな民間団体が起業家支援のための補助金や助成金を設けています。これらの支援を受けるためにはいくつかの用件をクリアしている必要があります。募集期間が短いものも多いので、どのようなものがあるのかをあらかじめチェックしておくとよいでしょう。
「返済しなくてもよい資金調達」にはもうひとつ、ファクタリングという方法もあります。ファクタリングとは、会社の資産を売却することで資産を調達する方法です。起業時にファクタリングをするケースはありませんが、事業を続けていく上でファクタリングしなければならない可能性も出てくるかもしれません。たとえば、ファクタリングすることによって債権を売却すれば、資金を調達することができるだけでなくキャッシュフローを改善する効果も得られます。ただし、ファクタリングはほかの資金調達方法よりも資金調達コストが高くつく、というデメリットがあることも忘れてはならないポイントです。
会社を設立する際には、登記や融資の申請など、さまざまな手続きをする必要があります。また、考えておかなければならないことも多いので、つい頭がこんがらがってしまうということもあるかもしれません。そのようなことにならないためにも、手続きに必要な書類をあらかじめリストアップしておき、持参するときにはチェックすることが大切です。
また、手続き時には必要な印鑑を忘れないようにしましょう。印鑑証明書を受けた代表者印である会社実印と社印、それから代表社印と分けている場合には銀行印を用意する必要があります。
手続きに必要な費用としては、まず公証役場に支払う定款の認証手数料と謄本代が挙げられます。定款認証手数料は5万円で、謄本代は2千円です。また、紙の定款を作成した場合には印紙代として4万円が必要となります。
登記申請の際には、登録免許税を治めなければなりません。株式会社の登録免許税は資本金の0.7%ですが、その合計が15万円に満たない場合には一律で15万円になります。合資会社などの場合は6万円です。申請の際にはこれらの現金も忘れないよう注意しましょう。
会社設立のための準備をする際、最も理想的なのは今現在だけでなく、遠い将来のことも見越した上で準備をしていくことです。とはいうものの、起業前には考えなければならないことが多いため、なかなか先のことまで頭が回らないということも多いでしょう。起業をする際にはさまざまな手続きをする必要がありますが、何よりも大切なことはどのような順番で行うのかという手順を理解していることです。そうしてしなければならないことをひとつひとつ順番にこなしていくことで、スムーズに事を進めることができるでしょう。
まずはしなければならないことをリストアップすることが大切です。そうして全体を見極めたうえで、個々の課題に対応していくようにしましょう。
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