最終更新日:2023年11月10日
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独立開業を考えている人にとって最初のハードルとなるのが、開業資金をどうするかという問題です。お金があって余っており、資金の心配なしに自由に事業を始められるなどといった人はめったにいないでしょう。そのため、開業を行う際にはなんらかの方法で資金の調達を行う必要があります。そこで、具体的にどのような方法があるのかについて解説をしていきます。
開業資金について検討する場合、最初に考えるべきなのが自宅開業にするかそれともオフィスや店舗などを借りて開業するかです。それによって必要となる金額は大きく変わってきます。もし店舗を構えて商売を行う場合、開業資金は少なくとも数百万円に達するのが一般的です。それだけ高額になるのは、物件を借りる際の家賃や保証金の他に店舗改装や備品調達など、必要な費用が多岐に及ぶからです。次に、店舗は持たずにオフィスだけ借りて開業するパターンですが、この場合は大規模な改装工事などは必要ないので、開業資金はぐっと抑えられるでしょう。それでも、オフィスを借りるのにお金はかかりますし、電話やコピー機などの事務用品は一通り揃える必要があります。
開業資金にどの程度かかるかはケースバイケースですが、一般的な相場からいうと100万円程度は用意したいところです。それらに対して、自宅で開業を行うと物件に要する費用が不要になるのでかなり安上がりです。この場合は、数十万円程度でビジネスを始められる可能性もあります。自宅でも可能なビジネスとしては、ライター、カメラマン、デザイナー、翻訳、行政書士、税理士などが挙げられます。また、通販サイトを作れば、通信販売による小売業を始めることも可能です。さらに、少しコストをかけてもよいのなら、自宅の一部を改装して居酒屋やコーヒーショップをオープンすることもできます。他には、学習塾や料理教室といった習い事のビジネスやマッサージやネイルサロンといった美容や健康に関するビジネスなどもあります。
それでは、開業の際に必要な資金としては具体的にどのようなものがあるのでしょうか。その内訳をみてみると、まず店舗ありビジネスを行う際に必要となってくるのが、テナント保証金、内装工事費、設備費用、備品代、仕入費用などといったものです。ただ、前のテナント利用者が使っていた内装や設備を流用できる居抜き物件の場合は、大幅にコストを抑えることができます。一方、自宅でビジネスを行う場合はこれらのコストの大部分を削ることが可能ですが、忘れてはならないのが運転資金です。
ビジネスというのは軌道に乗るまである程度の時間がかかるものなので、開業した時点で資金がゼロになってしまってはたちまち経営に行き詰まってしまいます。仕入費用や光熱費の支払い、人を雇う場合は人件費など、少なくとも3カ月程度は収入がゼロでも事業を続けていけるだけのお金を用意しておいたほうがよいでしょう。それから、自宅で事業を行うにしても電話やパソコンなどは仕事専門のものを購入しておきたいところです。一緒にしてしまうと税務の計算が非常に複雑になってしまうからです。
開業資金を調達する手段としてもっとも手軽といえるのが、まず自己資金を用意し、足りない額を個人の借り入れによって補うという方法です。たとえば、自己資金での不足分が数十万円と比較的少額な場合は、ノンバンクを利用して個人名義でお金を借りるという手があります。ノンバンクは定職に就いていれば保証人なしの無担保でも借り入れが可能であり、銀行などに比べてハードルが低いのが大きなメリットです。
それに加え、申込から貸付までの期間が短くて即日融資が可能だという利点もあります。したがって、急にお金が必要となった場合は有力な選択肢となるでしょう。ただ、ノンバンクは金利が高く借り入れの上限も低いので、基本的に開業時の資金調達には適していません。個人名義で借り入れをするぐらいなら、資本金の額を小さくして当面の資金に回すという手もあるので、そこは慎重に考えたいところです。
また、借り入れを考えるにしても自己資金はなるべく多く用意したほうが資金集めは有利になります。なぜなら、借り入れの上限額は自己資金の額で決められることが多いからです。仮に、自己資金が100万円なら借り入れはその2倍の200万円までとなっている場合でも、自己資金が200万円あれば400万円まで借りられることになります。そもそも、自由に使えて返済の必要がない自己資金を多く用意できれば、それだけ事業展開がやりやすくなる点は説明するまでもないでしょう。
さらに、家族や知人に借り入れするというのも身近な資金調達法です。個人間のやり取りなので、利息や返済期限については自由に設定できるのが魅力です。その代わり、軽い気持ちで貸し借りを行うと、あとになって身内同士のトラブルに発展する可能性があります。この方法を選択するのであれば返済方法などについてはよく話し合い、お互いの信頼を損なわないようにしておくことが大切です。
資金調達というと、多くの人は銀行などの金融機関からの融資を思い浮かべるかもしれませんが、開業資金を金融機関から借り入れるのはかなり困難です。ノンバンクであれば借り入れそのもののハードルは低いのですが、その分、利子が高くなりますし、融資の上限額も限られているのが難点です。逆に、銀行などは利子が低く抑えられているのですが、過去になんの実績もない新規事業者に融資を行うことはあまりありません。利子が低い分、融資を行う相手は確実に返済をしてもらえるところを選んでいるからです。
その代わり、もし融資を受けられれば、対外的な信用度が一気にアップします。そして、その後の金策も非常に楽になるため、チャンスがあるのであればチャレンジする価値はあるでしょう。金融機関から借り入れが可能となるポイントは自己資金額と担保能力です。担保があれば融資のハードルが下がるのは当然ですが、それと同じように自己資金の割合が大きければ返済能力が高いと見なされて融資を受けやすくなるのです。
融資を受けたいけれど、民間の金融機関からは断られてしまったという場合には、日本政策金融公庫という選択肢があります。日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、日本の経済発展や産業の活性化を目的とした制度融資を行っています。そのため、開業資金の融資にも積極的なのです。もちろん、100%融資を受けられるというわけではなく、審査をクリアする必要があります。保証人や担保に関しても確認をされます。
ただ、絶対こうでなければならないという審査基準があるわけではないので、最低基準さえ満たしていれば、粘り強く相談することで融資を受けられる可能性は高くなるでしょう。さらに、各自治体にも制度融資は存在します。なんとしても融資を受けたい場合は、これらの利用も検討してみましょう。
助成金や補助金は融資とは異なり、返済の必要のない資金です。それだけに、開業の際にはぜひとも利用したいところです。ただ、その種類は多岐に及び、なかには自己資金があることを条件にしているものもあります。そのため、申請の前にはよく条件を比較して自分が計画している事業に合ったものを選ぶことが大切です。ちなみに、助成金は募集の要件さえ満たしていれば申請者全員が受給することができます。
それに対して、補助金は採択件数や総額が決まっており、申請数がそれをオーバーすると審査で落とされる可能性が出てきます。選択をする際にはその点も考慮に入れておいたほうがよいでしょう。また、助成金や補助金が受け取れるのは実際に開業をし、その実績を報告してからです。したがって、開業資金そのものを得る手段として助成金や補助金を利用することはできません。あくまでも、開業に費やした資金を補てんするのが目的なのです。
助成金や補助金は、主催する団体によって大きく4つに分かれます。経済産業省、厚生労働省、地方自治体、企業・民間団体です。まず、経済産業省は中小企業庁が中心となり、主に地域の活性化や中小企業の振興を目的とした補助金を扱っています。特に、創業期の企業や規模の小さな企業が利用しやすいのが特徴です。それに対して、厚生労働省は雇用促進のための助成金が中心となっています。開業時だけでなく、新たに人を雇用する際には重宝する制度です。
一方、それとは別に各市町村が主催する補助金もあります。その主な趣旨は地域の活性化を目指したものであり、補助金の内容も地域色豊かなものとなっています。ただ、なかには補助金にあまり力を入れていない自治体もあるため、開業する場所をどこにするかといった問題も意外に重要です。最後は企業・民間団体による助成金・補助金ですが、その内容は団体によってさまざまです。たとえば、新技術の開発や新サービスの取り組みなどに対して援助を行うといったものがあります。技術やアイデアに自信のある人はこうしたものにチャレンジしてみるのも一つの手です。
開業に伴う融資を希望する際には、申請先の融資判断基準を理解しておくことが大切です。最低限の条件を満たしていなければ融資が受けられる望みはなく、申請をしても時間の無駄になってしまうからです。たとえば、融資のハードルが低い日本政策金融公庫でも最低限の判断基準は存在します。日本政策金融公庫の新創業融資制度の場合、勤務経験年数6年以上、創業7年以内というのがそれです。
勤務経験年数は脱サラして開業する場合、社会人としての最低限のスキルが身に就いているかの判断を行うためのものです。つまり、6年以上の経験があれば最低限の水準はクリアしているだろうというわけです。また、この制度は新しく創業した事業者を後押しするものなので、創業から時間が経過しすぎればその趣旨から逸脱することになります。7年というのはその線引きです。
このように、融資を行っている金融機関にはそれぞれ最低限の融資判断基準が存在します。具体的な内容は金融機関によってそれぞれ異なりますが、大きなポイントとなるのが自己資金と経歴です。自己資金は事業に対する本気度のバロメーターです。自己資金があまりにも少ないと「事業を口実にお金を借りたいだけなのでは?」と思われかねません。
そして、いくら熱意があっても能力がなければ成功はおぼつかないので、その事業に関するスキルや経歴が備わっているかを見られます。事業を始める側としては、経験はこれから身につけるのだと考えているかもしれませんが、融資をする側としてはまったくの素人では論外だと考えるのが一般的です。以上の点を参考にしつつ、融資申請を検討している金融機関が融資判断基準として具体的に何を求めているかを調べていきましょう。
開業を行ううえで融資は重要なポイントであり、いくら融資してもらえるかによって事業計画も変わってくる場合もあります。実際問題として、受けられる融資額は自己資金の2倍程度までです。したがって、事業計画を考える際にはその額を目安とすることになります。たとえば、自己資金が500万円あれば、1000万円までなら融資してもらえる可能性が高いというわけです。自己資金が50万円しかなければ融資額は最大100万円ということになりますし、もし自己資金がセロであれば融資自体が受けられないということにもなりかねません。つまり、自己資金が少ないからその分を融資で補おうとか、すべてを融資で賄おうというのは極めて困難であるということです。
とはいうものの、日本政策金融公庫の新創業融資制度では自己資金の9倍まで融資が受けられるという話もあります。しかし、それはあくまでも理論上の限度額にすぎません。現実問題としてその額を融資してもらえる可能性は極めて低いため、過度な期待は禁物です。ちなみに、知人から一時的にお金を借りて自己資金を大きく見せるなどといったことはできません。本当にそれが自己の資金であるのかの証明が求められるからです。そうした点からも、将来開業を目指すのであればコツコツと自己資金を蓄えておくことがいかに大切なのかがわかるはずです。
融資を受けようと思っても、自己資金が少なければ借りられる金額は限られてしまいます。また、補助金や助成金は申請しても受給できるのが開業後となり、開業資金としては利用できないという問題点があります。そこで、もし事業計画には自信があるけれど自己資金が少ないといった場合には、個人投資家の支援を受けるというのも一つの手です。「投資家が実績もない見ず知らずの人間にお金を出してくれるのか」と疑問に思うかもしれませんが、こうした例は決して珍しいことではありません。
たとえ無名の起業家だったとしても事業計画を見て将来有望だと判断すれば、資金を提供してくれる個人投資家は数多く存在します。しかも、彼らが提供する資金は融資ではなく、出資である点が大きなポイントです。つまり、返済の必要がないお金であり、事業者側が金銭的リスクを負わなくてすむのです。ただ、問題は自分に投資してくれる投資家をどうやって探すかです。昔はその点が大きなネックでした。
しかし、現代では起業家と投資家をつなぐマッチングサイトが数多くあるので、そのハードルはかなり低くなっています。マッチングサイトの基本的なシステムとしては、まず起業家が自分の考えている事業内容の概要をサイトに登録し、それに興味を持つ投資家が現れるのを待つという形になります。そして、投資家からのアプローチがあれば交渉の場を持ち、詳しい話を行うというわけです。その際に成否の鍵を握るのが事業計画書です。いくら魅力的なアイデアでも具体性がなければ投資家もお金を出そうという気にはなれないでしょう。投資家を説得できるだけのプレゼンテーションを行えるようにするためにも、事前に練り上げた事業計画書を作成しておくことが大切です。
事業計画書は「事業の目的」「事業の内容」「マーケティング戦略」「売上・利益予測」「開業資金計画・収支計画」などを、ワードやパワーポイントなどを用いて作成するのが一般的です。要点を絞り、写真や図表などを用いてわかりやすいものを作り上げれば説得力も増してきます。それに加え、投資家に対する訴求力をより高めるためには、投資家自身に対するリサーチも欠かせません。投資家が過去にどのような分野に投資しているかを調べ、その興味がどこにあるかを理解するのです。それに沿った形で計画書にアピールポイントを盛り込めば、投資家が心を動かす確率も高くなるはずです。
話がまとまれば投資をしてもらえることになります。あくまで出資なので、担保や個人保証などを求められることはありません。その代わり、投資家は投資をした時点でオーナーという形になり、経営に口を挟む権利を得ます。経営の自由を奪われるものとしてそれを嫌がる人もいるでしょう。その一方で、投資家のなかには経営経験の豊富な人も多いため、彼らにオーナーになってもらうことで有益なアドバイスを得られるというメリットも生まれます。要は、投資家と良い関係を構築することが大切なのです。そのためには事前の話し合いが肝心であり、投資家の人柄や自分の発案した事業のどの部分に何を期待して出資するのかといった事柄はよく確認しておきたいところです。
資金調達の方法としては、株式のように不特定多数の人々から投資を募るという方法もあります。しかし、株を利用するには株式会社を立ち上げる必要があり、そのハードル自体が非常に高いものになります。そこで、個人事業などの立ち上げを考えている人に検討してほしいのが、クラウドファンディングの利用です。クラウドファンディングの市場規模は急成長を続けており、個人事業主や中小企業の有力な資金調達法として注目されています。
そもそもクラウドファンディングとは何かというと、インターネットを通じて広く支援者を募る資金調達法です。資金を得るまでの具体的な流れとしては、まずネット上にあるクラウドファンディングサイトに登録して、事業内容や目標金額が妥当なものかなどといった審査を受けます。審査を通過すれば、そのサイトに具体的な内容を掲載して支援者を募ることになります。そして、目標額に達すればそのサイトに成功報酬を支払うわけです。報酬の具体的な金額はサイトによってバラバラですが、一般的に支援総額の5~20%程度が相場です。もし目標額に届かなかった場合は報酬を支払う必要はなく、集まったお金は支援者に全額返還することになります。
ちなみに、クラウドファンディングには金融型、購入型、寄付型の3種類があります。このうち、株式に最も近いものが金融型です。このタイプでは支援金で立ち上げた事業で利益を得た場合、その一部を支援額に応じて支援者に還元することになります。支援者側からすると株式ではハードルの高かった投資を小口から気軽に行えるのが魅力です。日本では法規制の問題もあってあまり普及はしてきませんでしたが、規制緩和に伴うこれからの動きが注目されています。
それに対して、購入型とは支援額に応じてそのプロジェクトで開発された商品やサービスを無料提供するというものです。結果的には先行販売という形になるため、支援者を集めるにはそのプロジェクトに個人として魅力を感じてもらえるかどうかが大きなポイントとなります。日本国内では最も普及しているクラウドファンディングの形です。
最後の寄付型は支援者がリターンを求めないタイプであり、被災地や発展途上国の支援といった社会的意義の大きなプロジェクトによく用いられます。普通の寄付と違うのはその透明性です。募金などでは寄付したお金がその後どのように使用されたかはわかりませんが、クラウドファンディングではそういった情報が透明化されています。そのため、安心してお金を出せるというわけです。
自己資金がなく、投資を募るだけの事業計画も持ち合わせていないけれどなんとか開業したいという場合には、フランチャイズという選択肢があります。フランチャイズは加盟することで本部の看板を使って商売ができ、しかも経営に関するノウハウをすべて伝授してくれるので初心者でも事業を始められるというのが強みです。その反面、加盟料やロイヤリティなどを本部に支払わなければならず、金銭的負担は少なくないというイメージがあります。
ところが、なかには開業資金0円で始められるフランチャイズ契約もあるのです。また、完全に0円ではなくても、ごく少額で開業できるフランチャイズ契約も多く存在します。もちろん、本部も利益を得なければならないので毎月のロイヤリティなどは支払わなくてはなりませんが、とにかく開業の時点で資金が必要ないというのは大きなアドバンテージだといえるでしょう。
ちなみに、本部側がなぜそれを実施できるかというと、もともと開業資金を低く抑えられるビジネスなので、最初に開業資金を徴収しなくても採算が取れるからです。したがって、開業資金0円で行えるフランチャイズにはその業種に一定の傾向があります。たとえば、依頼者の自宅に訪問して行うハウスクリーニングや家事代行、訪問介護サービスなどです。これらの事業は自宅を事務所にしての開業が可能であるため、0円開業のプランも成立できるというわけです。
その他にも、フランチャイズ契約で0円開業を実施している業種としては、住まいの小規模補修を低料金で行うホームリペア、配食サービス、web製作事業などがあります。これらの業種で開業を考えている人は、0円での開業サービスを行っているフランチャイズ契約があるのかを実際にネットなどで調べてみるのがよいでしょう。
開業資金の調達方法として融資は有力な選択肢の一つです。しかし、その選択肢を安易に選ぶのは得策ではありません。融資は利子をつけて返済しなければならないお金なので、大きな制約を受けることになります。時期がくれば毎月返済を迫られるので、それが経営を圧迫する可能性があります。しかも、融資の額が大きければ大きいほどその負担は重いものになるのです。したがって、融資は基本的に受けないのがベストであり、どうしても必要な場合でも最小限の額にとどめるのが賢明です。
そのためには、融資以外の資金調達法がないかを検討することが重要になってきます。
たとえば、個人投資家の投資を募るのも一つの手です。また、クラウドファンディングによる資金調達も幅広く利用されるようになっていますし、業種によっては開業資金0円のフランチャイズ契約を行うこともできます。いろいろな可能性を探り、無理のない資金計画を立てていきましょう。
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