最終更新日:2023年11月10日
続々独立開業中!独立開業をした方々に人気のフランチャイズ本部ベスト10を公開中。
いま注目の急成長ビジネスがひと目でわかります。
ホームセンター、飲食店、マッサージ店など、小規模から中規模の店舗運営を任される「店長」には、いわゆる「雇われ店長」と「オーナー店長」の2つの立場の違いがあります。なかでも「雇われ店長」は、実際の店舗の経営に関わるわけでなく、店の所有権を持つオーナーから店の切り盛りだけを任されているという役回りです。今回はこのような「雇われ店長」についてのメリットやデメリット、将来性などについて詳しく解説していきましょう。
飲食店や美容院、マッサージ店など小規模から中規模の店舗では、いわゆる経営権を持たない「雇われ店長」が店を切り盛りしているケースが多くみられます。この雇われ店長は通常、店舗を運営する会社の従業員から選ばれますので、肩書は「店長」となっていても、実際には店を切り盛りするための責任者という立場の従業員にすぎません。雇われ店長には店舗の経営や従業員の雇用といった重要な判断を行う権限はないので、あくまでもオーナーの指示や裁断に従って、店の運営の責任者として業務にあたります。
近年ではこうした雇われ店長が、「名ばかり管理職」として劣悪な労働環境にあることが社会的に問題視されています。名ばかり管理職とは労働基準法41条第2項にある「管理監督者」という規定を悪用した労働問題のことです。
そもそも管理監督者とは、会社や店舗の経営に関与し、部署や会社の各部門を統括できる立場にある人のことを指します。そしてこの管理監督者にあたる人に対しては法律上、残業代や時間外労働などの割増賃金を払わなくてもいいということになっているのです。
ところが実際には店舗の経営権や人事裁量権を与えられていないのに、雇われ店長が管理監督者扱いとなっているケースが多々あります。このような状況での雇われ店長は残業代や休日手当などが十分に支払われず、長時間労働や過度な責任を負わされた勤務を強いられているというのが現状です。
このようにあくまでオーナーに雇われている立場にありながら、従業員や店舗の管理を任される「中間管理職」的な立場にあるのが雇われ店長です。労働環境的に厳しい状態に置かれがちというデメリットがある一方、経営母体のしっかりした会社であれば、経営責任を気にすることなく店舗経営を行うことができるというメリットはあります。特に美容院やマッサージ店など、将来的に独立することを見越して、自分の技量を磨きながら店舗経営のノウハウを勉強しておきたい、という人にとっては、雇われ店長としての経験が今後に活きてくるでしょう。
では、もう少し具体的に「雇われ店長」が「オーナー店長」とどのような違いがあるのかを解説していきましょう。まず大きな違いは、オーナー店長は「経営者」、雇われ店長は「従業員」ということです。
オーナー店長といっても、一から独立開業している人だけでなく、大手のチェーンから業務委託されているフランチャイズ加盟店のオーナーという人もいますので、業態については細かな違いはあります。しかし、オーナー店長は店舗について一定の経営権を持っているので、経営者であるという点ではどのような業態でも同じです。経営者なので、店舗の運営や経営方針、店舗の運用にかかる費用から収益を上げることまで、すべての責任を負っています。店舗の経営が傾けばその赤字を負わなくてはなりませんし、資金繰りが苦しければ自ら頭を下げて金融機関などから資金を借りなくてはなりません。その反面、収益が大きくなれば収入は増えますし、新たな店舗を立ち上げるなど、事業拡大についての経営判断も自由です。自分の取り分をどれくらいにするか、自分の勤務時間をどうするかなども自由に決められます。
では、雇われ店長はどうかというと、雇われ店長はあくまでも重い責任を負った従業員にすぎませんので、店舗経営に関する重大な判断、たとえば店舗の形態、規模の変更、従業員の雇用といったことを独断で行うことはできません。どんなに店舗経営に問題があったとしても、オーナーや会社の決定にそって業務を行う必要があります。かといって、店舗運営に行き詰まるとその責任を取らされる立場にありますから、非常に立ち回りの難しいポジションです。業務量が増えたとしても、それに応じて必ずしも基本給が上がるわけではありません。オーナーや会社の裁量次第で解雇される、あるいは低賃金のまま仕事量や責任だけ大きくなっていくといったリスクを抱え込むこともしばしばです。
さらに、雇われ店長にありがちなリスクとして、オーナーや会社が変わった場合に契約内容が変わることがあります。オーナーが事業譲渡してしまうことによって労働条件が変更してしまうというケースです。
店舗の経営状態が悪い場合に事業譲渡されたケースでは、それまで正社員扱いであったはずが有期雇用の契約社員に契約変更されるといった事態も起こり得ます。法律上、オーナーが変わった場合であっても、一方的に労働者に不利な労働契約へと変更することは違法です(労働基準法2条労働条件の決定)。
ところが、店舗の経営状態などを客観的に判断した結果、コスト削減の必要性などから労働条件の変更が合理的であると判断されてしまうと、正社員から契約社員へといった条件変更がやむを得ないとされることもあります。何が合理的と判断されるかについては具体的に定義づけが難しいため、オーナーの都合によって泣く泣く不利な労働変更を受け入れてしまうことも少なくありません。
もっといい加減な場合だと、オーナーが変わったときに就業規則がいつのまにか変わってしまっていたということもあります。多くの会社や店舗では、労働条件については就業規則で定めていますが、この就業規則は使用者、つまりオーナーが労働者の代表の意見を聞けば変更してしまうことが可能です。
この変更についても一方的に労働者にとって不利益な変更をすることは許されませんが、その合理性を判断する一律の基準がないのが実情です。(最高裁判例では秋北バス事件、第四銀行事件と一定の判断はある)労働条件が悪くなったからといって、雇われ店長自らがいちいち新オーナーと交渉する、あるいは労働基準監督署や裁判で訴えるといったこともかなり難しいでしょう。したがって、雇われ店長には「オーナーの変更によって雇用形態が不利になる」というリスクがある、ということを理解しておかなくてはいけません。
雇われ店長にまつわるリスク、デメリットはまだまだあります。雇われ店長は店舗の運営の責任を負わされるにもかかわらず、経営判断に関する裁量はない、という点を説明してきました。
それだけでなく、オーナーの経営方針の変更、あるいはオーナーの変更によって労働条件などが変わってしまう可能性があるということも指摘しました。こういった点もわかるように、雇われ店長はオーナー側や店舗の経営状況によって賃金、労働時間などに大きな影響を受けます。実際に雇われ店長が直面するリスクとしてよくあげられるのが、コスト削減のあおりを受けて真っ先に人件費削減の対象となってしまうケースです。
店舗経営がうまくいかなくなってきた場合に、真っ先にコスト削減されるのが「人件費」です。この人件費削減は雇われ店長にさまざまな面で影響を及ぼします。大まかに言って、人件費を削減する方法は「人員を削る」あるいは「給料を削る」のどちらかです。「人員を削る」場合、足りなくなった人員分の仕事は残った社員やアルバイトなどで埋め合わせるしかありません。
なかでも、現場の責任者である雇われ店長の負担は最も大きなものになるでしょう。店の運営に必要な最低限の人数を確保できなくなることもあり、こうなると現場の責任者である雇われ店長は長時間働き続けなければならなくなります。
「給料を削る」場合は、雇われ店長の業務量はそのままであっても給料を減らされる、あるいは昇給なし、インセンティブなし、といった状況に置かれてしまいます。法律上明らかに問題がある場合であっても、店舗や会社の経営状況が悪いなどの理由から泣き寝入りしてしまうケースも多く、その場合は雇われ店長の労働環境はさらに悪化していきます。
もちろん、あまりにも理不尽なやり方についてはしっかり権利を主張すべきですが、雇われ店長として勤務している以上、基本給や労働条件はオーナーの意向や経営状況によって左右される、という前提は変わりません。
人件費削減のあおりを受けて、店舗の運営に必要な人員が明らかに足りない場合であっても、何とか残った人員でやりくりするしかありません。
こういったケースでは現場の責任者である雇われ店長の労働時間が長くなってしまう傾向にあります。現場責任者である雇われ店長はあくまでも「従業員」に過ぎませんから、どれだけ責任や業務量が多くても、経営者のように自由に出社時間を決めることはできません。したがって、仕事を終わらせるためにはどうしても残業時間を増やすしかなくなっていきます。
特にその傾向が顕著とされるのが飲食店業界です。飲食店は薄利多売のビジネスモデルですから、他のビジネスと比べて営業時間帯を長めに設定します。そのため、従業員はどうしても長時間拘束されてしまいがちです。それに加えて、飲食業界には人手不足という構造的な問題を抱えています。
2017年度1月の帝国データバンクの調査では調査対象の飲食店の実に80.5%が人手不足と回答している状況です。当然人手の足りない状況では、雇われ店長の負担たるや想像を絶するものになることも多く、なかには労働基準法の基準を大幅に超える月300時間以上という長時間労働を強いられるということも少なくありません。
ツナグ働き方研究所による「飲食店店長調査」では、月間240時間以上働く店長は通常時で約43%、繁忙期でも67%にも及びます。月間240時間というのは週休2日制の通常の労働者に換算すれば残業時間が週80時間という状態ですから、これはいわゆる「過労死ライン」とされるレベルの労働時間です。
このように現場の人手不足の埋め合わせ、現場の責任者としての仕事量の多さ、それに加えて自分で勤務時間を決められない弱い立場と、雇われ店長が長時間労働を強いられてしまう要因は多くあります。そして、こうした事態を助長してしまっているのが、先ほども少し触れた「名ばかり管理職問題」です。
「名ばかり管理職問題」とは、雇われ店長などの管理職を、要件を満たしていないにもかかわらず労働基準法上の「管理監督者」扱いにしてしまうという問題です。
そもそも「管理監督者」とは、会社の部署の管理・監督立場にあり、会社の経営にも関与している管理職のことです。自分の業務量も裁量的にコントロールでき、賃金面でも他の従業員より優遇されていなければなりません。
こういった要件があるにもかかわらず、経営参加権も自由裁量権もない雇われ店長が「管理監督者」扱いとされがちになることには理由があります。それは「管理監督者」には残業代などの割増賃金を支払わなくてもいいという法律上の規定(労働基準法41条2項)があるためです。この規定を悪用して、雇われ店長を安くこき使う会社が後を絶たず、社会問題化しています。もちろん、このようなやり方は違法です。
この他にも、雇われ店長が安く使われてしまう事例はあります。公には残業代を支払うと主張している会社であっても、残業代を固定残業代として、最初から給料に組み込んでいるというケースです。
たとえば基本給22万円だとして、月30時間分の残業代3万円を固定残業代としてプラスして全部で25万円支払います、という給与体系です。このやり方は多くの業界で横行していて、形としては残業代を支払っているように見えても、実際の残業時間に見合った報酬を支払わなくて済むようにするための巧妙な手口といえます。もちろん、法的にはかなり問題がありますが、仮にこういった給与体系に不満があったとしても、実際に自ら賃金交渉に乗り出すような人は少ないというのが実情です。
以上の事例を元に、簡単に給与計算をしてみましょう。固定残業代込みで月給25万円の雇われ店長を想定してください。残業代はすでに組み込まれていますので、いくら残業しても残業代はもらえません。
各種の手当てなどもつかない状態と想定します。週40時間の労働時間プラス残業時間を過労死ラインギリギリの月80時間としましょう。すると、月当たりの労働時間は240時間、ここから給料を時給換算するとおよそ1,040円となります。東京都の飲食店のバイト平均時給は1,091円(タウンワーク調べ)ですから、これでは時給ベースでバイトよりも低い賃金ということになります。この事例はそれほどひどい事例というものではなく、実際にはもっと長い時間残業しているという雇われ店長も少なくないのが現状です。
雇われ店長は現場の責任者ですから、低賃金で残業時間が長い、といった待遇面でのデメリットが大きかったとしても、現場を切り盛りする責任から逃れることはできません。特にチェーン展開している店舗の直営店で勤務する雇われ店長は、アルバイトなどの労務管理が重要な仕事になります。
業種による違いがあるとはいえ、どのような店舗でも現場を回していくにはアルバイトの力を使わざるを得ません。ただ、アルバイトは人員の確保やシフトの安定化という点でかなり不確実です。特に繁忙期にはアルバイトに欠員が出るといった事態も多く、その場合は店長が何とか現場をカバーしなければなりません。
さらにノルマの問題があります。チェーン店などでは店舗ごとにノルマが課されています。このノルマや店舗が赤字を出した場合の責任は、現場責任者たる雇われ店長がとることになります。たとえ店舗の立地や集客戦略に問題があったとしても、店長に大きな裁量権はありませんから、本部から理不尽なノルマを課されたとしても対策の打ちようがないということもしばしばです。
このように、雇われ店長には数多くのデメリット、リスクが存在します。オーナーや会社の経営方針や経済的な体力がよければ、それほど負担なく従業員として現場を切り盛りすることができます。
しかし多くの場合、経営に関する実際に裁量権のない状態にもかかわらず、重い責任だけを負わされることの多いポジションです。オーナーの意向や経営状態によって労働環境や待遇面などが左右されてしまうので、たとえ正社員扱いだとしても、社会的に安定している状態と言い切れない面もあります。
それでは、雇われ店長はキャリアアップにつながるかという点について考えてみましょう。実のところ、雇われ店長としての経験は同業種以外にはアピールポイントが少ないといえます。経営に関してはオーナーや会社本部の意向にそって業務をこなしているだけですから、経営者としては評価されにくいのです。
それに加えて、勤務していた業界でのみ通用するノウハウやルールが多いということもあって、その経験が他業種への転職でのアピールポイントになりにくいという面もあります。
雇われ店長から再びどこかの雇われ店長を目指すという転職パターンは、キャリアアップにはなりません。そのため、雇われ店長としてのキャリアを活かした転職先は限られてきます。そもそも転職を考えたとしても、現場であまりに大きな責任を負っているために、安易にやめにくいという実情もあります。
個人店の雇われ店長だと「衛生管理責任者」や「防火管理者」など、店の運営に必要となる法的な地位についていることもありますから、オーナーとの個人的な付き合いの濃さを含めて退職しづらい状況も多いです。
雇われ店長として働きながら将来の転職や独立開業に備えたいなど、将来のビジョンがしっかりしているのであれば、店舗経営や技術向上のための資格取得などに活かしていくべきでしょう。
エステやマッサージ系の資格には、実務経験の期間が資格の取得条件となっているものが多くあります。経理などが得意であれば簿記3級程度は取得しても損はありません。重要なのは将来的にどうしていきたいのか、という自分のキャリアに対する明確なビジョンです。漫然と雇われ店長を続けていくと、将来への選択肢がどんどん狭くなっていってしまいます。
雇われ店長から将来的に独立開業したい、と考えている場合であっても、いきなりいざ開業というのはかなりの勇気がいります。一から開業する場合には、店舗の準備、仕入れ、広告、経理、労務管理と、すべてを自分の責任と判断で行っていかなくてはなりません。
店舗が軌道にのるまでの間に必要な活動資金をある程度貯めておかなければなりませんし、銀行や金融機関と自分で借り入れの交渉を行う必要もあります。独立開業すると決めたなら資金面や人脈、店舗の準備など、かなり前の段階から周到に準備しておかなければならず、またその準備が万全だからと言って経営がうまくいく保証はどこにもありません。
そこで、雇われ店長からオーナー店長になるうえで非常に効率のいいキャリアプランといえるのが、フランチャイズ契約によって経営者を目指すというルートです。フランチャイズ契約は大手チェーン店と契約し、加盟料を払って大手チェーン店の看板、ノウハウを使って開業する方法です。
フランチャイズ契約では、加盟後に売り上げに対して一定割合のロイヤリティを加盟先に支払わなくてはなりません。また、本部のノウハウや経営指導を受けることもあるので、オーナー店長といえども加盟先の方針に沿った店舗経営を行う必要があります。
ただし、ある程度すでに成功しているノウハウや大手の持つ知名度、評判などの高いブランドイメージを利用して開業できるというのは、すべて一から始める独立開業よりもはるかに効率的で有利といえるでしょう。売り上げを伸ばせるかどうかは自分の経営手腕次第になりますので、うまくいけば経営者として成功するチャンスを早く手に入れられる可能性があります。
以上のように、雇われ店長に関するメリットやデメリットについて解説してきました。どのような業種であれ、雇われ店長は店長といえども従業員にすぎません。現場責任者としてノルマが課されることもあって、その責任には重いものがあるのですが、オーナーや会社本部の意向次第で長時間労働を強いられたり、アルバイト以下の賃金で働かされたりと、そのリスクやデメリットも無視できません。転職などのキャリアアップを考えた場合でも、その経歴が強みとなる業種は限られてきますので、将来性という点でも疑問符が付きます。
雇われ店長からのキャリアアップとして有効なルートとして考えられるのは主に次の2つです。まず1つ目は同じ業界でより待遇のいい会社へ転職すること。長時間労働や過酷なノルマがなく、店舗売り上げだけに頼らない収益構造があって、経済的な体力のある同業種の会社がねらい目です。同業種ならば前職での経験を活かせるチャンスがあるので、まったくの別分野への転職よりはチャンスも大きいといえます。
そして、もう1つのルートが独立開業してオーナー店長になることです。オーナー店長はこれまでとちがって経営者として店舗を運営していくこととなります。店舗経営に関するすべての事柄を自分の責任でもってやりくりする必要があるので、雇われ店長時代と比べてもやるべきこと、準備するべきことは膨大です。
ただし、経営が軌道に乗りさえすれば、自分の裁量次第でライフスタイルや経営方針を決めていくことができます。リスクを負う分、成功すれば明るい展望が見えてくるというわけです。
ただ、いきなり裸一貫からの独立開業というと、相当入念に準備する場合でない限り、かなり尻込みしてしまうことも事実です。そういった場合は大手チェーンのノウハウを利用したフランチャイズ型の開業という手段もあります。
もちろん、この場合でも経営者として集客や店舗管理についての勉強を欠かすことはできません。ただし、ある程度成功事例を確立している大手のノウハウをはじめから実践することは、成功への近道を手に入れることにつながるといえるでしょう。
いずれにせよ、オーナー店長として独立したいと考えているのならば、雇われ店長時代から自分の将来のキャリアについて明確なビジョンを持ち、自分の思い描くキャリアプランについてしっかり準備をして、果敢に行動に移していくということが重要です。
カテゴリ