最終更新日:2023年11月10日
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いずれは独立開業して自分の可能性を大いに試してみたいというのは素晴らしい夢です。ただ、夢を実現させるには多くの困難を超えていかなければなりません。起業精神に富んだそんな人におすすめなのが、独立を支援してくれる制度を積極的に利用することです。企業が独自に設けている制度から公的機関で受けられる支援まで、あまり知られていないのが不思議なくらいさまざまな独立支援制度が存在します。自分の希望に合った制度をチェックして、独立開業の道のりを早めてみてはどうでしょうか。
まずは企業の独立支援制度について見ていきます。飲食業界では、長い間働いてお店に貢献した社員を対象に「のれん分け」という独立支援制度を設けており、独立時には店舗の屋号やメニューを自由に使用できたり、同じ仕入れ先から品物を卸すことができたりといった優遇が受けられます。美容業界においてものれん分けがめずらしくないようです。サービスや経営のノウハウがもれるのを怖れるよりも、顧客がごっそりと奪われたり個人情報が流出したりするほうがよほど困ることになるので、のれん分けをして共存体制を構築することが双方にとってメリットとなるのでしょう。これらは個人で独立した店舗を持ってはいるのですが、独立元とフランチャイズ契約を結んでいることになります。
建設業界では、雇用契約から請負契約にする形をとって独立支援をしている場合もあるようです。雇用契約が結ばれているうちは社員であるのに対して、請負契約となればそれは独立した「親方」となるわけで、従業員を雇っていなくても独立したことになります。
企業が積極的に社員の独立支援をしている場合には、求人の段階で支援制度について説明されていることが多いです。独立支援制度を設けている企業を対象にした求人サイトもあるので利用しましょう。
次に、公的機関で行われている独立支援制度を確認していきます。独立開業も含めた中小企業のサポートを行っているのが「中小企業基盤整備機構(中小機構)」です。独立行政法人である中小機構は、総企業数の実に99.7%を占めている日本の中小企業を対象に、経営相談や専門家派遣、資金提供などの支援を行っています。企業からの相談を創業期、成長期、成熟期に分けており、それぞれの段階に合ったサポートを受けられるのが効率的です。中小企業の連鎖倒産を防止するために備えとして、「経営セーフティ共済制度」なども提供しています。
地域により密着した公的な取り組みとしては、「都道府県等中小企業支援センター」と「中小企業・ベンチャー総合支援センター」が全国各地に設けられています。独立のための相談がしたい人、経営のためのアドバイスを求めている人などは積極的に利用しましょう。
各地域の商工会議所が行っている独立支援サービス「シニアアドバイザーセンター」も、全国各地に広がっています。独立や企業経営について相談したい人を対象に、専門のアドバイザーによる支援が受けられるので、気軽な気持ちで相談してみるのも良いかもしれません
市区町村が中心となって取り組む創業支援の枠組みについてもチェックしておきましょう。市区町村と地域の商工会などの民間団体、さらには信用組合などの金融機関がネットワークを組んで創業支援を行うのが「創業支援事業計画」です。2017年12月の調べでは、全国1,379市区町村において、1,234件の計画が認定されています。それぞれの地域ならではの連携と、実情にあった支援内容が計画に組み込まれ、創業希望者を対象としたセミナーの開設や、個別の事案への専門的なアドバイス、融資や助成などを通して地域における創業を支えようとする取り組みです。
また、上記の創業支援事業計画にも参加している日本政策金融公庫(日本公庫)の融資も、起業家にとっては心強い味方となるでしょう。日本公庫は国が株式の100%を保有している会社なので、株式会社の体裁はとっていますが純粋の利潤追求のための組織ではありません。銀行などに比べて融資などを受けやすいといえます。
さらに、上述した「創業支援事業計画」よりも多くの支援が受けられる「特定創業支援事業」というものがあります。これは原則4回以上、1ヶ月を超える継続的な支援が保証される制度で、創業関連保証を創業の半年前から受けることができるようになり、金額も1,000万円から1,500万円に拡充されるのです。ただ、創業する会社が特定創業支援事業として認定されるには、創業した後に事業の成功確率が高まると認められなければなりません。継続的な支援を受けられるのは創業者にとって願ってもないことなので、ぜひとも活用したいものです。
大手企業や財団などでは独自に補助金や助成金の制度を設けている場合もあります。しかし、これら民間の支援は、かなりシビアに対象者を選んでいるといえるでしょう。優秀なビジネスプランを持ち、経歴や能力に信頼の置けるような人物、つまり銀行が喜んで融資を引き受けるような案件でなくては審査をクリアできないかもしれません。非常に狭き門だと捉えつつも、自分のビジネスプランに確固とした自信があれば挑戦してみるのも良いでしょう。
いくつか例を挙げると、三菱UFJ技術育成財団では、創業後5年以内の中小企業を対象に研究開発助成金制度を設けています。1プロジェクトにつき300万円以内もしくは研究開発対象費用の2分の1の助成金が出るという破格の条件です。また、ちふれ化粧品では女性起業家支援制度を設けており、資本金100万円と貸付金900万円の合計1,000万円の融資が受けられるチャンスを提供しています。
独立や起業の際の補助金や助成金は、一般的なローンとはまったく異なります。補助金と助成金は基本的に返済の必要がありません。助成金は受給要件を満たしていれば原則だれでも受け取ることができ、補助金は予算の上限が決まっているなどの理由から、申し込んだ会社のうちで選ばれた所のみが受け取ることができます。そして、補助金、助成金ともに後払いというのが基本となります。
この後払いの制度がもっとも気をつけるべき点です。融資の場合には審査に通ればお金が使えるようになりますが、補助金や助成金は必要な経費を使い終わった後で、その経費の内訳を報告してしっかりと確認がなされた時点で支払われるのです。申請時に届け出た目的以外の使途にお金を流用すると制度上の重大な違反となり、補助金・助成金は受けられなくなります。また、後払いのため、資金の受け取りには時間がかかることも頭に入れておくと良いでしょう。
独立や起業の形は業界や業種によって異なりますし、起業家本人の希望によっても大きく変わってくるでしょう。そのため、まずは具体的にどのような形で創業を行いたいのかという明確なビジョンを持つ必要があります。企業からののれん分けを目指すのも良いでしょうし、自分の希望にぴったりと合う新しいお店を開くのも魅力的です。創業の方向性が定まったならば、次にそれに合った支援を選んで受けられるようにしましょう。
創業を支援してくれる制度は国、都道府県、市区村長、金融機関、商工会、民間の大手企業や団体などさまざまなレベルで提供されています。補助金や助成金は基本的に後払いという点にも注意が必要です。しっかりとした創業計画と経営戦略が描けなければ、支援制度の恩恵を受けることも、補助金や助成金を有効に活用することもできなくなります。それぞれの支援制度の特徴を理解しながら、積極的に役立てる努力をしましょう。
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