フランチャイズ(FC)とは何か
11,開業後のポイント
-加盟店の役割と責任
加盟店は1個の独立した事業体であり、オーナーは経営者として経営責任を負っています。独立した事業体としての実践ポイントを以下に挙げました。
a経営管理
本部が提示する経営計画書などを参考にして、予算、目標、売上高、経費、利益実績、などの分析、方策を考え、実践します。
b店舗運営管理
フランチャイズシステムのブランドイメージを大きく損なうような営業をしないこと、また、適正な人件費や労働管理をすることを加盟店側は求められます。
c販促活動
費用対効果の薄い広報活動を避け、本部が提供する商品、サービス、広告など最大限に活用しましょう。また、オーナーは本部と交渉し、地域の性格にあった販売促進活動を優先して行いましょう。
d投資の観念
何事も得るためにはそれ相応の対価が必要となります。ある程度のリスクは、成功のためには不可欠であり、そのリスクに対して、先行投資であるという意識を持つことが大事になります。
e人材育成
頭数欲しさにあわてて採用すると、あとで苦労します。成功のためには、接客態度が良く意識の高い、ゆくゆくはマネジメントができるような人材を採用、教育していくことが理想であるといえます。
-本部との信頼、コミュニケーション
成功のためには、本部との信頼関係がとても重要になります。本部は加盟店の繁栄を実現するために努力し、加盟店は自らの業績を向上させることによって本部機能の強化を図る、この好循環が相互の発展を実現させることになります。
(1)スーパーバイザー
スーパーバイザーとは、加盟店にたいして経営指導を行う人材のことです。またスーパーバイザーは、加盟店が感じている日々刻々と変化するお客様の動向 や、店舗状況、加盟店の不満、要望などを本部に吸い上げ調整、改善を図るなど、本部と加盟店をつなぐパイプの役割をになっています。加盟店側も、スーパー バイザーとのコミュニケーションを大事にして、有用な情報を共有しましょう。スーパーバイザーが加盟店に訪問する頻度は、フランチャイズ本部によってさま ざまですが、あまりにも少ない場合は、関係が疎遠になる危険性があります。
(2)本部とのコミュニケーション
チェーンによって異なりますが、本部が、加盟店のオーナー会や交流会を組織している場合があります。こういった機会には積極的に参加し、有益な情報を管理、共有して、本部の理念や経営戦略を理解、咀嚼、反映させて、営業実務の向上につなげていきましょう。
-ノウハウの活用
成功のポイントとして、本部の提供するノウハウを、フル活用しましょう。
(1)データの活用
本部が提供する各種データ類は、本部によってその種類や量が異なります。しかしそのデータをいかに活かして経営戦略に役立てるか、は経営者次第です
(2)マニュアルの活用
教育のツールとして、マニュアルは欠かせません。従業員の理念や行動を統一化し標準化するために、マニュアルを最大限駆使しましょう。そして、業務でそれを実現させるとともにさらに改善すべきポイントを見つけ、本部に提言してさらに発展していくことが理想的です。
-契約の存続と終了
そもそも契約が終了する事由として、契約期間の満了、一方当事者の債務不履行による解除(法定解除)、フランチャイズ契約に定められた解除事由による解除(約定解除)、当事者の合意による解約等により終了します。
(1)契約期間の満了
重要なのはやはり、契約期間内に初期投資を回収できるかどうかです。ほとんどのチェーンでは、契約期間終了とともに、更新手続き、または自動更新になります。ただし、更新料の支払いが必要な可能性があるので注意が必要です。
(2)法定解除、約定解除
当事者の一方に債務不履行があれば、他方当事者は民法に基づき契約を解除することができます(法定解除)。また、多くのフランチャイズ契約には、加盟店側の債務不履行事由は契約書に列挙されているので、本部は加盟店の債務不履行についてはフランチャイズ契約に基づき契約を解除することができます(約定解除)。なお、フランチャイズ契約には、契約期間中でも申請によっては契約を解除できると定めている場合があります。ただし、中途解約については、多額の違約金規定が定められている場合があるので注意しましょう。
(3)合意解約
当事者の合意により契約を解約することもあります。この際は、合意書を作るのが一般的です。
-トラブルの現状と回避のための基礎知識
(1)契約締結時のトラブル
フランチャイズ契約において、本部が売り上げの予測を行う場合があります。もちろんその内容については、本部から独立した事業者である加盟店は全 ての責任を負いリスクは受け止めなければいけません。したがって、本部の売り上げ予測と、現実の売り上げが異なるからといって、本部に対して文句を言うこ とはできません。しかし過去の判例では、明らかに合理性を欠き、フランチャイジーに契約締結に関する判断を著しく誤らせる情報を提供したと判断された場合 は、本部の情報提供義務違反となるとしています。
(2)加盟金返還に関するトラブル
多くのフランチャイズ契約では、『いったん支払われた加盟金は理由の如何を問わず加盟店に返還されない』とされています(加盟金不返還特約)。情報を締結すれば本部は加盟店に対して商標使用許諾、研修、ノウハウ開示などを行うので、加盟金の対価性は満たされるので、加盟金未返還は当然であるともいえます。近年、『特定エリアで出店後の営業権』を付与するフランチャイズ契約(エリアエントリー契約ともいう)が現れてきました。エリアエントリー契約では、店舗物件確定の前に加盟金を支払いますが、後日、出店できなくても加盟金を返還してもらえない、というトラブルが発生しています。エリアエントリー契約締結の際は、物件が見つからないリスクを十分に認識する必要があります。
(3)立地に関するトラブル
本部が加盟店に対して物件を紹介する場合、売り上げが低迷してトラブルになる場合があります。このような場合でも基本的には加盟者の自己責任となっているので、立地条件に関しては自ら赴いて調査、検討する必要があります。
(4)経営指導に関するトラブル
本部から指定された仕入れ先や数量に反したとしてトラブルになるケースがあります。しっかりと契約内容、指示、制限内容を確認しましょう。
(5)テリトリーに関するトラブル
宅配等を除き、多くのフランチャイズ契約では、テリトリー権は認めていません。加盟店にテリトリー権が認められていない以上、近隣地域に直営店 や加盟店が出店してくる可能性は否めません。近隣の今後の出店計画や営業計画を事前に調査することを忘れないでください。また、テリトリー権を認められて いた場合、それはどこまで独占できるのか、はたまた、ただ優先されるだけなのか、しっかりと確認しましょう。
(6)競合禁止に関するトラブル
多くのフランチャイズ契約には競合禁止が定められています。加盟店が、当該フランチャイズと同種、または類似の事業を開業する場合には、競合禁 止義務違反になります。しかし過去の判例では、それを回避しようとして、①父親に競合行為をさせて加盟者が実質的に運営をした場合、②加盟者の共同経営者(加盟契約には署名していない人)に競合行為をさせた場合、③店舗を第三者に転貨して競合行為をしている場合、に競合禁止義務違反が認められたことがあります。注意しましょう。
(7)違約金条項に関するトラブル
フランチャイズ契約において、加盟店の守秘義務違反や競合禁止義務違反、中途解約などにおける違約金が、とても高額でありトラブルになる場合が あります。もちろんあまりにも高額な場合は裁判で無効になる場合がありますが、事前に違約金についてはしっかりと確認しておきましょう。