最終更新日:2023年11月10日
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キャリアアップのために、起業や転職を考える人は多いのではないでしょうか。特に、在籍していた企業で培ったノウハウやスキルを使えば即戦力にもなるため、同業他社への転職や同じ業界で独立する人も多くいるはずです。
ただし、退職後に同業への転職や競合となりうる会社設立で独立を検討する場合は、在籍していた企業との契約内容を確認しておくべきです。なかでも、競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)は、企業を退職したあとも影響し、場合によっては裁判に発展するケースもあるので注意しなくてはいけません。
この記事では、独立や転職をする前に注意すべき競業避止義務について解説します。在籍していた企業とのトラブルを回避するためにも、ぜひご覧ください。
目次
競業避止義務とは、在籍している(もしくはしていた)企業の従業員が、同業への転職や自分で競合に値する事業を始めるといった競業行為を禁止する義務をいいます。基本的に従業員は企業に対して誠実に行動し、利益に反する競業行為も差し控えなくてはいけません。
企業の扱う機密情報や技術が第三者に流用されてしまうと、情報元の企業にとっては大きな損害を受けるおそれがあります。このため、企業側は情報の漏えいを防ぐ規定を設けてリスクを抑制しているというわけです。
競業避止義務は機密情報を扱う役職だけでなく、一般の社員やアルバイトなども対象とした規定を定めている企業が増えています。一般的には、就業規則に競合禁止特約として盛り込まれているケースが多く、入社時や退社時に個別で誓約書へ署名を求められる場合もあります。
また、競業避止義務は、自分が独立をして経営者側になったときに、自社の利益を守るためにも必要な知識です。雇用した人材とのトラブルを避けるためにも覚えておきましょう。
競業避止義務は、おもに在職中の禁止規定と退職後の競業禁止があります。企業に在籍している間だけでなく、退職後の競業避止義務に関しても、在籍していた企業と元従業員の間で裁判に発展するケースも多いのです。それぞれどのようなことに注意しておくべきかを知っておきましょう。
労働契約法では「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」と定められています。企業によって規定の内容は異なりますが、在職中に以下のような行為をした場合は、競業避止義務違反となる可能性があるので注意が必要です。
競業避止義務に違反した従業員への対応は企業によって異なりますが、退職金や企業年金の支給を制限するなどの処罰があります。違反行為の内容や企業が受けた損害の程度によっては、懲戒解雇や損害賠償の請求を受ける可能性もあるので注意しなくてはいけません。
参考:労働契約法について(厚生労働省)
従業員が退職すると、同業他社への転職や独立をして、企業の機密情報や技術のノウハウを使用されるリスクが高くなります。場合によっては、顧客を奪われ不利益が生じるおそれがあることから、情報の漏えいを抑制する手段として、退職後の競業避止義務契約を求める企業が数多くあります。
退職後の競業避止義務は、入社時に就業規則に含まれていることもあれば、在籍時や退職時に個別で誓約書を作成するなどタイミングはさまざまです。企業によっては「退職後○ヵ月間は○○市内で競合他社への就職や競合事業を営むことを禁止する」といったように、期間や地域の制約が付いていることもあります。
競業避止義務違反となった場合は、損害賠償や競業行為の差し止めの請求を受けるおそれがあるので注意しなくてはいけません。転職や退職後の起業を検討する場合は、入社時などに交わした契約内容や就業規則を見直しておきましょう。
日本国憲法では、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と定められており、職業選択の自由が保障されています。企業から退職した元従業員の競業行為の制限は、日本国憲法の職業選択の自由で判断されるのが一般的です。
参考:国会関係法規-日本国憲法(衆議院)
職業選択の自由の観点からすると、退職後の転職先は個人が自由に決められるため、競合への転職も可能というのが原則です。たとえ退職後の競業避止義務の契約をして両者の合意があったとしても、必ず効力を発揮するわけではないのです。
職業選択の自由が保障されていることから、企業が従業員に課している競業避止義務の規定が有効かどうかは慎重に検討されます。特に退職後の競業避止義務をどこまで制限するのかという点は、裁判の争点になりやすい問題のひとつです。経済産業省では競業避止義務の有効性を判断するために、以下の6つの基準を設けています。
○企業側に守るべき利益があるか
守るべき利益とは、企業がもっている機密情報やノウハウなどの営業秘密です。競業避止義務を課すだけの妥当な営業秘密があるかなど、企業側の利益がどれくらいなのかということが基準となります。
○従業員の地位
地位とは形式的なものではなく、競業避止義務を課す必要がある従業員だったかという点が問われます。高い地位の役職であっても、営業機密など企業が守るべき情報に接していなければ競業避止義務違反とは判断されなかった判例もあります。
○地域的な限定の有無
地域的な限定は、企業の事業内容と禁止行為の地理的な制限との関係に合理性があるかがポイントです。全国的に事業展開している企業の場合は影響を与える範囲が広いので、勤務地から遠く離れた場所で転職や起業をした場合でも競業避止義務違反にあたると判断されることもあります。
○競業避止義務の存続期間
退職後の競業避止義務の存続期間は、事業内容や企業の利益面などから判断されることが多いです。1年以内の制限に関しては、競業避止義務が肯定されやすい傾向にあります。しかし、2年以上の長期にわたる制限は職業選択の自由を奪うことになるため、競業避止義務は無効とされる判例が多いです。
○禁止されている競業行為の範囲制限
禁止されている競業行為は、企業側の守るべき利益と整合性が取られているかが重要です。条件を明確にせずに、漠然と競合他社への転職や競合事業の展開を一切禁止するような規定では、職業選択の自由を侵害することから合理性が認められない判例が多いです。
例えば在職中に担当していた顧客への競業行為を禁止する規定などは、企業への損害が明確なので、違反と認められることがあります。
○代償措置が講じられているか
企業が従業員に対して競業避止義務の制限を課す対価として、どのような代償措置を取ったかがポイントになります。代償措置に明確な基準がある例は少ないです。しかし、金銭給付による措置が高額だったケースでは、代償措置があったと見なす判例もあります。
上記の他にも、競業避止義務違反において不当に高額な違約金を設定しているなど、必要以上に重い義務を課している場合は、民法の公序良俗違反となり無効と判断されます。また、競業避止義務の合意を強要したことが認められる場合も無効となる判例が多いです。
参考:競業避止義務契約の有効性について(経済産業省)
競業避止義務に法的な拘束力が弱いとはいえ、在籍していた企業で得た営業秘密を転職先や起業した事業で安易に取り扱うことは禁物です。機密情報として管理されている商品の生産や販売の方法・技術などの営業秘密を不正に使用・開示した場合は、不正競争防止法に触れる可能性があります。
機密情報を利用して、情報元の企業に大きな損害を与えた場合は、損害賠償請求や事業差し止めの民事措置だけではなく、刑事措置が取られることもあります。例えば、刑事的措置となる営業秘密侵害罪では、10年以下の懲役または2,000万円以下の罰金を科せられ、法人両罰規定では罰金が5億円にもなるのです。
参考:不正競争防止法の概要(経済産業省)
起業には、会社設立で独立する以外にも、フランチャイズ企業へ加盟する方法があります。既存加盟者のなかには、自分で独立開業をする前にフランチャイズで経営ノウハウやスキルを磨きたいという人も数多くいます。フランチャイズでは、経営ノウハウの提供やブランド力が利用できるため、事業経験が豊富にない人にとっては参入しやすいのが特徴です。
ただし、フランチャイズ加盟を検討する場合は、事前に経営の仕組みにを知っておく必要があります。加盟すれば継続的な本部サポートを受けられるなど、メリットが多いのも確かですが、特有のデメリットがあることも知ったうえで加盟しなくてはいけません。
例えば、フランチャイズの場合は、初期投資として必要になる加盟金や毎月支払いが発生するロイヤリティなどの支出があります。他にも、契約期間や途中解約の違約金、特に競合の多い業界では、先に解説した競業避止義務などの契約規定も把握しておく必要があります。
本部によって必要開業資金やロイヤリティの設定金額が異なります。このため、自分に合った加盟先を見つけるには、複数の本部を比較しながら慎重に加盟先を選ぶことが大切です。以下のページでは、フランチャイズ契約時の注意点を詳しく解説していますので、参考にしてください。
○フランチャイズの契約で重要なポイントとは?法律についてもご紹介!
初期費用が安いというだけで安易に契約すると、開業後や契約終了後にトラブルが起きやすいので注意しましょう。トラブルが裁判にまで発展してしまうと、在籍していた企業との関係が悪くなるうえ、事業自体が継続できなくなるおそれがあります。
同業に転職しても在籍していた企業に大きな不利益を与えなければ、自由競争の範囲内として扱われる多く、裁判にまで発展することは少ないです。とはいえ、常識的なモラルを守ることは大切です。退社後のトラブルを避けるためにも、在籍していた企業に、退職後の競業避止義務の規定があるか確認しておきましょう。
また、転職先や起業する事業が同業であっても、在籍している企業にあえて伝える必要はありません。同業への転職や起業のことを話すと、引き止められ辞めにくくなってしまうことがあるからです。在籍していた企業を退職する場合は、円満退社できるように心がけてください。そして、しっかり次のステップへの準備をして転職や独立開業を成功させましょう。
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